(27日、第106回全国高校野球選手権三重大会準決勝 津田学園2―9鈴鹿、7回コールド)

 ミラクルは、続けて起こらなかった。

 津田学園の中村駿亮(しゅんすけ)主将(3年)は、準々決勝に続いて先発のマウンドを任された。前の試合では、高田を相手に4回を投げて2失点。その後、味方が4点差を追いつき、延長サヨナラ勝ち。佐川竜朗監督が「甲子園に行くには、ミラクルが1試合は必要だ」と話すほど勢いづいた試合だった。

 「行けるところまで行け」と送り出されたこの試合。速球を狙われた前の試合の反省から、中村主将は変化球主体の投球に切り替えた。「慎重にコースを突き、打たせて取ろうと」。ところが、一回に先頭打者に四球を与えたのを機に、味方の失策も絡んで先制された。四回にも失策絡みで2点を与え、この回で降板した。

 守備の堅さが身上のチーム。「自分が慎重になりすぎたのが伝染し、野手も硬くなってエラーが出た。もっと思い切り行けばよかった」と中村主将。佐川監督は「いい時の中村なら、フライの打球が上がるのに、きょうはゼロだった」と、五回から継投に切り替えた。

 エースだが主将でもある。降板後も、ベンチの指示を伝えにマウンドへ走り寄り、味方を鼓舞した。チームは準々決勝と同じ3投手で継投したが、今度は追いつくことはできなかった。中村主将は「第1シードなら勝って当たり前と周囲に思われ、重圧はすごかった」と試合後、打ち明けた。

 首都圏の大学で、野球を続けるという。「監督を甲子園に連れて行けなかったけど、勝てる投手になって、成長した姿を見せるのも恩返しかな」と、少しほほえんだ。(本井宏人)

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