スケートボード男子ストリートの堀米雄斗選手が大逆転勝利で金メダルを獲得し、オリンピック連覇を果たしました。強さの秘密をプロスケートボーダーに聞きました。
■スケートボード堀米雄斗(25)五輪連覇
良原安美キャスター:
スケートボード男子ストリートの堀米雄斗選手(25)が見事、金メダル獲得となりました。前回の東京オリンピックに続いて連覇となります。
実は今回のオリンピックで代表入りを果たしたのは、6月のこと。オリンピック最終予選を逆転1位で出場権を獲得しました。
そして、パリオリンピック™でも最終滑走前は7位だったところ、大逆転の金メダルとなりました。
試合後のインタビューでは「パリ五輪までも地獄の時間だった。自分を最後まで信じられたことが優勝の鍵になった」と振り返っています。
逆転に強い方なんですか?
プロスケートボーダー 荒畑潤一さん:
プレッシャーにとても強いスケーターです。
良原キャスター:
スケートボードは45秒間の自由競技である「ラン」と、一発の技を競う「トリック」の合計得点で競います。「ラン」の終了時点では4位でした。
トリックの1本目は成功しますが、2、3、4本目を失敗してしまい、後がない中、5本目で見事に大成功し金メダルとなりました。
「ラン」
1本目 89.90 2本目 68.54
「トリック」
1本目 94.16 2本目 0.00 3本目 0.00 4本目 0.00 5本目 97.08
■プロが解説 どんな技をしていたの?
良原キャスター:
最高難度のトリックを解説していただきたいと思います。
決勝のトリックの1本目は見事成功。
荒畑さん:
90点台出てます。
ホラン千秋キャスター:
この技は難しいですか?
荒畑さん:
これは跳んだときに石の部分が見えていないので、感覚で(ひっ)かけないといけないので、相当難しい技だと思います。
井上キャスター:
感覚なんですか?
荒畑さん:
感覚ですね。何回も何回も練習して空間感知能力で。
井上キャスター:
まったく見えていないですか?
荒畑さん:
見えていないですね。
ホラン千秋キャスター:
振り返ったときに、初めて着地するかしないかの瞬間に乗れているかどうか…
荒畑さん:
時には、上に乗った際に滑ってそのまま転倒することもあります。
良原キャスター:
1本目は成功となりましたが、2本目は失敗してしまいます。
井上キャスター:
2本目はどういう技ですか?
荒畑さん:
空中で270度、板と一緒に体も回って、かける技です。
ホランキャスター:
これは、5本目に成功した技をずっとトライしていたということですよね。
井上キャスター:
5本目と失敗してしまった時との違いは何ですか?
荒畑さん:
回ったときから、レールの上にかけるまでのバランスですね。タイミングが少しでも狂うと、板が前の方に行ってしまいます。板が立たないと、板を立てる形の「ブラント」という形にならなくて、きちんと板を立てていないと安定してキープして滑っていけないので、着地の時にも支障が出ます。
■「あのクオリティでできるのは世界で一人、堀米選手だけ」
荒畑さん:
堀米選手はグーフィーなので、背中側にレールがある形になって、階段の方に進んでいきます。
まずは、ノーズといってスケートボードの先端で地面を叩き、板と一緒に自分の体も270度回りながら、かかとで板を立てるブラントの体勢にします。
ホランキャスター:
4分の3回転して、(板を)のせて…
荒畑さん:
左足のかかとでキープしてブラントの状態を保ちながら滑り切って、最後に(板を)90度曲げる。
井上キャスター:
3回ミスしたときは、どういうミスをしてしまったんですか?
荒畑さん:
組み方が浅かったり、回りすぎたり、かけそこなって地面に落ちて転倒してしまったり。最後まで滑りきったけど、バランスが後ろになりすぎて、すっぽ抜けて板が飛んで、寝そべってしまうような形になってしまったり。
ホランキャスター:
成功となるためには、着地してもそのまま(板に)乗り続けなきゃいけないということですよね。
荒畑さん:
はい、その通りです。
井上キャスター:
あの技は他の選手も出来る技なんですか?
荒畑さん:
あのクオリティであの階段の大きさでできるのは堀米選手だけです。世界で一人しかいないと思います。
井上キャスター:
点差が開いていたから、優勝するためには成功させないといけなかったんですか。
荒畑さん:
あれを乗らない限りは、金メダルはなかったと思います。
ホランキャスター:
もう後がない場面でプレッシャーに押しつぶされずに、成功させるところが王者たる所以というか。もちろん大変なこともあったと思いますが…。
荒畑さん:
経験の違いもありますよね。
井上キャスター:
特に女子を見ていると、世代交代が早いじゃないですか。それをある意味で覆している堀米選手は何が違うんですか?
荒畑さん:
やはり環境の違いがあると思います。LAを拠点としていることは大きいと思います。
ホランキャスター:
それだけ刺激が多いということですか?それとも機会が多いという事ですか?
荒畑さん:
世界レベルのトップの人たちと常日頃スケートボードしたり撮影したりしているので、その環境は大きいと思います。
井上キャスター:
前回もそうでしたが、全選手が讃え合う競技性があるじゃないですか。個人競技を見ているはずなのに、全員が敵味方なく、仲間のように見えてくる。あの競技性はどこから出てくるんですか?これまでのスポーツに無かったと思いますが…
荒畑さん:
僕らはお互いをリスペクトしているところがあって、ちょっと調子悪そうでも「今日調子悪そうじゃん、どうしたの?」「ここを直した方が調子良くなるんじゃない?」って普通に
言ったりとかもします。
ホランキャスター:
カルチャーからくるものなんですね。
荒畑さん:
気持ちから上げていって、みんなで気持ちを上げていこうっていう感じですね。
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<プロフィール>
荒畑潤一さん
プロスケートボーダー
元全日本チャンピオン 18歳で渡米しプロ選手に
大会運営やスケボー教室開催など幅広く活躍
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