“君たちはおとなしいパンダ”
アトランタオリンピックの銅メダリストで、フランス代表も率いた名コーチが日本代表のコーチに転身したのは今から7年前の2017年。
ボアダンコーチが当初、日本の女子選手たちに伝えたのは“自分たちが世界からどう見られているか”でした。
「君たちはかわいくておとなしいパンダ。フェンシングはうまいが怖くはない。外国チームは日本とあたっても気をつけようくらいしか思っていない」
“素質があると自覚させたかった”
厳しい現実を突きつけた裏には、ボアダンコーチが最も重視する選手たちのメンタル面の変革がありました。
日本の女子選手の素質を高く評価し、そこに勝利への執念が身につけば世界の壁を超えられると確信を持っていたのです。
「自分たちにどれだけの素質があるのかを自覚させたかった。全体的に技術があるチームだったがその自覚がなく、自分たちを下に見る傾向にあった。決してそうではなくて自分たちには素質があり十分な実力があることを伝えたかった」
自信つけさせる声かけを徹底
ボアダンコーチの就任以降、練習量が増えたわけではないといいます。
メリハリをつけた指導のもと、徹底してきたのは選手に自信をつけさせる声かけでした。
すると、女子フルーレの選手たちは国際大会の表彰台にあがる回数が増え、東京オリンピックでは唯一、自力での団体出場権を獲得するなど安定した強さを発揮するようになりました。
世界選手権で16年ぶり銅 声かけにも変化が
さらに自信が確信に変わったのが去年の世界選手権でした。
団体で16年ぶりの銅メダルを獲得し、オリンピックのメダルに手が届くところまで成長するとボアダンコーチが選手たちにかける言葉にも変化が生まれました。
東晟良選手
「優しすぎるというワードはもう言われなくなった。いまかけられるのは“ポジティブに強い気持ちで居続けること”」
宮脇花綸選手
「かわいいという言葉はもうない。“確実に勝たなければいけないとか、メダルをとれる”とかが多くなってきた」
全員が初戦敗退も “未来は変えられる”
迎えたパリの舞台。
最初に行われた個人戦では日本は3人の選手全員が初戦で敗退する予想外の結果となりました。
どう気持ちを切り替えるか。
ボアダンコーチは勝利への執念を高めてきた選手たちを信じることにしたのです。
「一番ショックなのは君たちだと分かっている。過去は変えられないが未来は変えられる。幸運なことに団体戦が残っている」
信頼に応え 日本女子史上初のメダル
その信頼に応え、団体では3位決定戦に進んでカナダとの接戦を勝ちきり、フェンシングでは日本女子史上初のオリンピックのメダルを獲得。
選手たちは満面の笑みでコーチへの感謝を口にしました。
宮脇花綸選手
「私が日本代表に入ったときはオリンピックに出るのが目標でメダルなんて考えられない状況だった。ボアダンコーチがきてみんなが強くなって実現したメダル」
フランク・ボアダンコーチ
「成長はすさまじいがここでは終われない。彼女たちには伸びしろがあり未来がある。まだ上を目指せる」
“虎”になった選手たち さらなる扉開く
“パンダ”から“虎”へ、生まれ変わった選手たち。
ボアダンコーチのもと、女子フェンシング界のさらなる扉を開くべく、“虎”たちは歩みを進めます。
【詳しい経過はこちら】フェンシング 女子フルーレ団体 日本が銅メダル パリ五輪
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