ポイントは「気温」「石畳」「急な坂」

女子マラソンのスタート地点となるパリ市庁舎前の気温は、レース本番と同じ午前8時時点で取材した日は23度ほど。日本と比べると涼しく感じられますが…。

増田さん
「選手にとってはとても走りやすく、湿度も高くないので呼吸も楽に感じられます。ただパリの気温って朝と日中の寒暖差が激しいので、選手は中盤以降暑さを感じることになるでしょうね。体力を温存するため、いくら涼しくても序盤はペースを上げて走ることはないと思いますね」

2つ目のポイントとして挙げた「石畳」はレース序盤に断続的に続きます。増田さん自身が実際にコースを走って確認したところ…。

増田さん
「アスファルトと比べると足に伝わってくる感覚が硬く感じます。特にふくらはぎに負担がかかってきます。石と石に隙間があるので、そこに足をとられて転倒することとかに気をつけてほしいですね。選手は前を見て走っていますから、足元は見ない。集団の中で周りのライバルの気配を感じながら走っているので、自分の位置取りをしっかりしようとして転ばないようにしてほしい。石畳の特徴を理解して、コースの下見や試走を入念にやっている日本の選手は有利だと思いますよ」

3つのポイントのうち最大の関門として挙げたのが、28キロすぎから続く最大勾配13.5%とされる上り坂です。

増田さん
「箱根駅伝の5区の山登りよりも急だと思います。オリンピックでこんな坂道は見たことがないですね。ここに来るまでに足が疲れている中で、壁のようにそびえ立つこの坂を見たら、選手は『えー』と思いますよね。急な上り坂に加えて、日中の日差しの強さっていうのも感じながら走る…本当に厳しいマラソンですね」

「意外とアフリカの選手って、こういう坂を経験していないんですよ。東京オリンピックを見ていても、暑いと諦めも早いんです。メダル候補の選手たちが諦めたときに、緻密に足づくりをしてきた日本の選手の気持ちの強さ、“ど根性”が生かされるマラソンになるので。スピード勝負にならないコースだからこそ、チャンスですよ。楽しみです」

コースの着想は“1789年”

今回のコースは1789年にパリの女性が中心となって食糧難を訴えパリ市庁舎からベルサイユ宮殿まで歩いた「ベルサイユ行進」から着想を得ていて、大会組織委員会は女子の種目に注目してもらおうと、1984年のロサンゼルス大会で採用されて以来、初めて女子マラソンが大会の最終日に行われます。

増田さん
「『ベルサイユ行進』という女性が行進した歴史の道を走るわけですね。ジェンダー平等の象徴として女子マラソンが大会の“大トリ”を飾ることになったので、日本の選手には大会を締めくくるよい走りでゴールに向かってほしいと思います」

パリオリンピック最終日の11日に行われる女子マラソンには、日本からは鈴木優花選手、一山麻緒選手が出場します。
(※出場予定だった前田穂南選手は右大たい骨疲労骨折のため欠場することになりました)

【詳しくはこちら】女子マラソン五輪代表選考レース MGC

NHK放送予定

NHKでは総合テレビで日本時間の11日午後2時50分から総合テレビで中継し、NHKプラスでも配信予定です。

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