(11日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 白樺学園0―1創成館)
出場校アンケートには、自らの性格を「適当」と記した。
甲子園はバックネット裏の観客席が低く、嫌でも大観衆が視界に入る。「慣れるんじゃないですかね。そんなに気にしないんで」。試合前日、半沢理玖投手(3年)は、高ぶるわけでなく、そう語った。
一回裏、先頭打者に内野安打、犠打で二塁に進まれた。188センチの右腕は顔色ひとつ変えず、後続を断った。「1点覚悟でしたが結果ゼロ。まあ良かったなぐらいの気持ちでした」
北海道北部の和寒町出身。亀田直紀監督は投球ではなく、「走る姿勢が良く、トレーニングすれば高校野球だけでなく、その上をねらえる」とほれ込んだほどの素材だった。
中学卒業時に180センチを超えていたが、体の線は細かった。マウンドに登ると緊張が顔に出ることも。昨夏のエース西村昴浩さん(上武大)らと体幹を鍛え上げ、自信もついていった。
「適当」とはいうが、野球に関しては「適当じゃない」。読む本は野球に関するものばかり。生活の乱れが野球に影響するからと、昨秋の北海道大会敗退後は寮長を引き受けた。
「半沢の『適当』は言葉通りじゃない。全ての準備が完了したので、後は何があっても『適当』でいい」とは、チームメートの分析だ。
この日、スライダーを低めに集め、連打も長打も許さなかった。7回⅓を投げ、1失点(自責点0)。後を託した神谷春空投手(2年)と相手投手も含め、大会5年ぶりとなる無四死球試合の記録をつくった。
「個人としてもチームとしても出来る準備はしてきたつもり。点は取れなかったが、一番の投球ができて楽しめた」
北大会から甲子園まで、右肩上がりの急成長を遂げた右腕は、充実した表情で振り返った。(古源盛一)
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