スポーツorカルチャー? 競技の由来は
アメリカで生まれたブレイキンはもともとギャングどうしの抗争をダンスで解決しようと始まった背景があり、“スポーツ”より“カルチャー”の側面が強い競技です。
このためブレイキンがオリンピックの「スポーツ」と見なされることに対して、選手や関係者からは懐疑的な見方も出ていました。ブレイキン女子で金メダルを獲得したAMI=湯浅亜実選手も戸惑いがあったと話します。
AMI
「ブレイキンは自己表現であり、アートに近いもので、好き嫌いはあるかもしれないがどっちが正解とか間違いとかはない。スポーツになったときに勝ち負けですべてが決まってしまうのはどうなんだろうと葛藤があった。ブレイキンのよさが、オリンピックという大きなものの一部になることで潰されるのではないかという不安があった」
大ブーイングが見せた“価値観”
スポーツとカルチャーの両面があるブレイキンが、オリンピックでどのように受け止められるのか。その競技の魅力を象徴するようなシーンがありました。
日本のHiro10=大能寛飛選手が予選リーグの第3戦で、頭を使って高速で回るヘッドスピンなどのパワームーブを連発したあとのことです。ジャッジは対戦相手の勝ちと判断しましたが、会場からは大ブーイング。観客はHiro10に大歓声と拍手を送っていました。
「それぞれの個性に、価値がある」
ブレイキンの価値観に会場中が包まれた瞬間でした。
ダンスを終えた直後には涙をみせていたHiro10は「すごく感動したし、いろいろなメッセージをもらった。自分がやりたいブレイキンを一番大きいステージでできたのはうれしい」と達成感を口にしました。
笑顔で 誰よりも楽しむ!
日本選手団の旗手を務め、日本のブレイキン界の顔としてオリンピックのステージに立ったShigekix=半井重幸選手。
「誰よりも楽しむ」という気持ちを大切に笑顔を絶やさず、持ち味とする回転技の「パワームーブ」や音楽に合わせて体を止める「フリーズ」を次々と決めました。
1日最大15ラウンドをこなすため体力強化にも取り組んできたShigekix。メダルにはあと1歩届かなかったものの、最後まで難度の高い技で会場を湧かせ続けました。
Shigekix
「きょうという日を本当に楽しみ尽くした。すごく多くの人が心を動かされるような大会になったのではないか」
オリンピックの初代金メダリストになったAMIは大会を振り返り、こう話しました。
AMI
「今までブレイキンを知らなかった人たちが『おもしろいね』『かっこいいね』と言ってくれた。スポーツになって確実にブレイキンの扉が1つ開いたと感じる。みんなが個性を磨き上げて、全員に全員のよさがあるブレイキンは、これからも絶対に変わらないでほしい」
ブレイキンは、オリンピックの競技としては4年後のロサンゼルス大会では実施されません。Shigekixは「これからどういうふうにブレイキンを盛り上げていくかは、まさに僕たちの腕の見せどころだ」と、最後まで笑顔を絶やしませんでした。
結果やメダルの色だけが、すべてではない。
そんなブレイキンの価値観は、オリンピックやスポーツのあり方にも影響を与えるのではないかと感じる、魅力にあふれたパリオリンピックのステージでした。
【NHKニュース】パリオリンピック2024
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