「終戦の日」の15日、甲子園球場では戦争の犠牲者を悼んだ黙禱(もくとう)が行われる。30秒間、サイレンは甲高く続くのに、身の引き締まる静寂を感じる。独特な時間だ。
甲子園で初めて黙禱が行われたのは、第45回記念大会(1963年)。正午になると試合を中断し、選手、観客、大会関係者らすべての人が目を閉じる。黙禱が始まった当初、審判員としてグラウンドに立っていた三輪武さん(93)は、懐かしく思い出す。
「試合前に選手には伝えてあるんだけど、プレーを止めるタイミングが難しくてね。いいタイミングで止められるよう、時間が近づくと、審判員同士でサインを出し合った。もう60年以上ですか。感慨深いですね」
夏の甲子園での黙禱には戦没者追悼に併せ、別の意味あいも含まれる。
この日は各都道府県で功績のあった野球指導者へ贈る「育成功労賞」の表彰式がある。この賞が設けられて約20年。指導する時と同じようにユニホーム姿になった受賞者が、頭(こうべ)を垂れる。そこに込められるメッセージは「平和の尊さ」だ。
日本高校野球連盟の井本亘事務局長は話す。「野球ができるのは平和だからこそ。指導者の背中を見て、子どもたちが平和の意味を考えて育ってほしい。15日は最も適した日だと思う」
サイレン音を聞きながら、毎年、野球がそこにある喜びをかみしめたい。(山田佳毅)
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