広島一筋で21年プレーしたMF青山敏弘(38)が今季限りで現役を退く。1日に本拠Eピースであった札幌戦後の引退セレモニーで胴上げされ、背番号と同じ数の6度、宙を舞った。

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 度重なるけがも含め、数々の苦境を乗り越えてきた。語りぐさの一つは岡山・作陽高時代の「幻のゴール」。2002年、全国高校選手権の岡山県大会決勝。当時2年の青山が延長戦で放ったシュートはゴール奥の支柱に当たって跳ね返った。だが、決まれば勝利となる「Vゴール」は認められず、もつれ込んだPK戦で敗れた。

 スピーチでもその誤審騒動に触れ、「当時はつらく、苦しい思いをした」。だが、糧にした。翌年は全国高校選手権に出場。「あの出来事があったからか、何度も立ち上がれる強い気持ちを培うことが出来た」

 1日の試合で札幌を率いていたペトロビッチ監督は、06年に青山がJ1デビューを果たしたときの広島の監督だ。後半37分から出場する直前、相手ベンチから歩み寄ってきた恩師と抱き合った。その光景を見た時、記者は胸が熱くなった。同じ思いだったサポーターも多かったのではないだろうか。

 イタリア語で「旗手」などを意味し、一つの所属先で長くプレーしてチームの顔となった選手を「バンディエラ」という。青山は、広島のそれだ。セレモニーで「何度も立ち上がれたのは、みなさんがいたから」と観客席に向かって感謝の言葉を並べた。「これぞ」という自身のプレーを、「ファンサービス」と表現していたベテランらしい別れのあいさつだった。

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