日本銀行本店=2020年1月9日、松倉佑輔撮影

 日銀が20日に公表した企業向けアンケート調査では、金融緩和策によってもたらされた円安についてプラスとマイナスの評価が入り交じった。足元の歴史的な円安進行などで輸入価格が上昇し、家計や企業の負担が増大している点が意識されたとみられる。

為替相場に影響

 約25年間にわたる金融緩和がもたらした効果(三つまで回答可)について尋ねると、「為替相場の動向」との回答が大・中堅企業の製造業で30%超に上った。「金融機関からの借入金利の低下」「金融機関の融資姿勢の積極化」に続いて3番目に多かった。

 金融緩和による金利低下によって円が売られやすくなり、為替相場は円安方向で推移しやすい。円相場は2010年代前半に対ドルで一時1ドル=70円台半ばまで円高・ドル安の動きが強まっていたが、13年に安倍晋三政権下で異次元緩和が導入され、円安に反転した。企業からは「アベノミクス時には円安進行などにより、輸出企業は景気拡大を強く実感した」(自動車・大企業)▽「インバウンド需要が喚起された」(小売り・中小企業)――といった声が聞かれた。

金融緩和の副作用は

 一方、金融緩和の副作用(三つまで回答可)についても、「為替相場の動向」を挙げる企業が目立った。特に製造業は大企業・中堅企業で48%、中小・零細企業で39%に上り、ともに最多だった。

 具体的には「仕入れ原価が変動してしまうため、為替が安定していた方がありがたい」(小売り・零細企業)▽「短期間の大きな為替変動は事業計画の策定の支障となった」(食料品・大企業)▽「円安は原材料費の増加や外国人労働者の採用難をもたらした」(運輸・中小企業)――といった意見が出た。

 金融政策に何を求めるか尋ねた設問(三つまで回答可)では、製造業で「為替市場の安定」を挙げる大企業・中堅企業が76%を占めた。「物価の安定」(56%)や「景気の安定」(53%)を上回り、最も多かった。

 今回の調査は、日銀が23年11月から24年2月にかけて大企業から中小・零細企業まで計2509社を対象に訪問や郵送、インターネットでアンケートを実施し、2256社から回答を得た。【浅川大樹】

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