東急の豪華特急「ザ・ロイヤルエクスプレス」は木をふんだんに使うなど内装にもこだわる

JR東海と東急は30日、東急の豪華特急を東海道線に走らせ静岡県内の各地を巡る新たな旅行プランを発表した。価格は3泊4日で1人75万円から。静岡は新幹線や高速道路が横断する交通の要衝ながら通過する人も多く、高価格帯の周遊プランを旅先としての多様な魅力のアピールにつなげる。

「静岡・富士クルーズトレイン」と題し、東急の「THE ROYAL EXPRESS(ザ・ロイヤルエクスプレス)」を横浜駅発着でJR東日本とJR東海が運行する。複数の鉄道事業者が観光振興でタッグを組む。30日の記者会見でJR東海の丹羽俊介社長は「地域の皆さんと静岡の魅力を発信できるチャンスだ」と力を込めた。

記者会見に臨んだJR東海の丹羽俊介社長と東急の堀江正博社長(30日、静岡市)

運行期間は11月8日〜12月16日で、各週の金曜から月曜にかけて3泊4日の旅を計6回用意した。募集人数は各回30人で価格は途中で泊まるホテルのタイプや参加人数によって異なるが75万〜114万円。主に全国の鉄道ファンやシニア層の利用を見込む。

5月31日から公式ホームページや郵送で申し込みを受け付ける。応募多数の場合は抽選になる。東急は同じ特急によるツアーをJR北海道やJR四国と組んでこれまでに実施し、「すぐに予約が埋まるほど人気だった」(東急担当者)という。

ザ・ロイヤルエクスプレスは2017年に横浜駅と伊豆急下田駅を結ぶツアーの目玉列車として誕生した。車内で快適に過ごし、景色をゆったり楽しんでもらうため、東急系の伊豆急行で使われていた特急車両(伊豆急2100系)を大幅に改装した。

多くの観光列車を手掛けた水戸岡鋭治氏のデザインにより8両編成の車内はそれぞれ雰囲気が異なり、キッチンやダイニング、イベントスペースなどもある。内装は日本の伝統技法を落とし込んで木材をふんだんに用いている。

東海道線に投入される東急の豪華特急「ザ・ロイヤルエクスプレス」

プランでは横浜駅を出て車窓から富士山を臨みながら富士川まで進み、三島に戻って沼津市などで1泊する。2日目は宿場町だった新居町を巡り県西部の浜名湖畔で泊まる。3日目は駿河湾と富士山を臨む景勝地・日本平で宿泊。4日目に横浜駅に戻る。

車内で計4回出る昼食は伊東市のフランス料理店や浜松市のうなぎ店など県内の名店が監修した。車内でのバイオリンの生演奏も予定している。

「静岡にやっと豪華列車が来てくれた。万感の思い」と県観光協会の担当者は語る。東海道線の静岡地区を豪華特急が走るのは初めて。4日間かけて県内を周遊しながら東西に長い静岡の見どころや多彩な食を楽しんでもらえる点が特徴だ。

首都圏が中心の東急とJR東海が連携を深めたのは東急新横浜線が開業した23年3月から。これまでも東急の車両を東海道新幹線の色にするなどの協業はあった。豪華特急ツアーの企画は東急から声をかけ、在来線のダイヤとの調整や技術的な確認などを経て実現に至ったという。

静岡県は富士山を中心に観光名所が多いものの、東名阪の移動時に通過するだけという人も多い。「脱・通過県」へ県もデジタルスタンプラリーなどで周遊を喚起してきた。JR東海と東急のタッグで静岡の魅力が広く伝われば経済波及効果も大きく、「10年先まで運行を」(県観光協会)と期待は大きい。

(佐伯太朗)

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