資生堂が7日発表した2024年1〜6月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比99.9%減の1500万円だった。事前の市場予想平均(30億円強)を下回った。化粧品販売が中国や免税品向けで落ち込み、約200億円の構造改革費用の計上も響いた。
1〜6月期ベースの最終損益は新型コロナウイルス禍が直撃した20年に213億円の赤字(19年は524億円の黒字)に転落した。22年に162億円の黒字に回復したものの、構造改革費用の計上などで23年は3割減益と再び悪化した。中国の経済環境の悪化を受け、同日、抜本的な対応策を含めた新たな経営戦略を今年11月末に発表することを明らかにした。持続的な成長へ向け、藤原憲太郎社長は日本経済新聞の取材に「空港での免税品販売などトラベルリテール事業と中国の位置づけを見直す。今後は欧米をより伸ばしたい」と話した。
売上高は3%増の5085億円だった。日本の堅調や為替効果などで増収を確保したが、本業のもうけを示すコア営業利益は192億円と31%減った。中国や免税品向けの低迷に加え、インフレに伴う人件費拡大や、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連の投資増も響いた。24年12月期通期の業績予想(純利益で1%増の220億円)は据え置いた。
コア営業利益を事業別にみると、トラベルリテールの落ち込みが鮮明だ。77億円と前年同期の半分になった。トラベルリテールの現地通貨ベースの売上高は23%減った。店頭での売上高はアジアが20%台前半の落ち込みだった。特に海南島への中国人旅行客で節約志向が高まるなど購買行動の変化が響いた。中国以外の訪日客が増えた日本(2倍超)や、香水などフレグランスが伸びた欧米(20%台前半の増加)の好調で補えなかった。
中国事業も苦戦し、コア営業利益は49億円と10%減った。中国本土での店頭での売上高は10%台前半の減少だった。特に化粧品のグローバルブランド「SHISEIDO」が20%台前半と落ち込んだ。同日の決算会見で、広藤綾子最高財務責任者(CFO)は「市場全体が価格競争に巻き込まれている」と話した。
日本事業は回復した。コア営業損益は79億円の黒字(前年同期は36億円の赤字)と、同期間では3年ぶりの黒字になった。注力する高価格帯ブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」が好調だった。構造改革効果も出た。
1〜6月期の純利益の今期通期に対する進捗率は1%に満たない。広藤CFOは「足元の状況は厳しいが予想は据え置いた。トラベルリテールと中国の減速に対して、全社をあげて取り組む」と強調した。中国では過度なディスカウントに依存しない戦略を続け、採算性を重視する。
構造改革も続ける。日本では早期退職実施などを、中国では不採算店舗の閉鎖やブランドの選択と集中を、グローバルでは人材の生産性向上に取り組んでおり、24年12月期通期も300億円の構造改革費用の計上を予定する。
一連の対応によるコスト削減効果は今期で150億円、25年12月期で250億円を見込む。事業環境に逆風が吹く中でも、25年12月期にコア営業利益で500億円(今期は550億円)という方針は維持する。
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