【ワシントン=鈴木龍司】米共和党のトランプ前大統領は7月31日、11月の大統領選を戦うことが確実視される民主党のハリス副大統領について「ずっとインド人だったのに突然、黒人に変身した」と発言した。ハリス陣営は、黒人の父とインド系の母を持つハリス氏と黒人への差別的な発言だとして批判を強めており、黒人有権者にも反発が広がる可能性がある。

ハリス副大統領(資料写真)

 トランプ氏は中西部イリノイ州シカゴで開かれた全米黒人ジャーナリスト協会の会合に出席。記者の質問に答える形で、ハリス氏に関して「(以前は)インド人ということだけをアピールしていた。数年前に黒人になるまで、黒人だということを知らなかった」と述べた。「今は黒人として見られたがっている」とも語り、選挙目的との持論を展開した。「私はリンカーン大統領以来、黒人にとって最高の大統領だった」と強調したが、記者とのやりとりに不機嫌そうな態度をとり続け、途中で退席した。

◆「インド人から黒人に」とトランプ氏

 この発言を受け、ハリス氏は同日、南部テキサス州ヒューストンでの集会で「私たちはまた新たな気付きを得た。昔と同じで分断を招く無礼なショーだった」と批判。ジャンピエール大統領報道官も記者会見で「不快な発言で侮辱している」と非難した。  今回の選挙戦でトランプ陣営は、もともと民主党支持者が多い黒人票の切り崩しに注力してきた。ただ、米CNNテレビなどの最新の世論調査では、ハリス氏は黒人有権者の78%の支持を集め、トランプ氏は15%にとどまる。バイデン大統領の撤退表明前の23%から支持率が落ち込んでおり、ハリス氏に押されている。

◆問題発言に焦点が当たるトランプ&バンス陣営

 こうした状況を受け、トランプ陣営は今回の会合を「黒人社会が直面する差し迫った問題が焦点になる」と位置付け、支持拡大の好機と捉えていた。ただ、米メディアは差別的な発言によって黒人の支持離れを招く可能性を指摘した。  一方、共和党では副大統領候補のバンス上院議員も、過去に保守系メディアでハリス氏ら出産経験のない女性を「子どもがいない惨めな人生を送るキャット・レディー(猫好きの女性)」と呼んだことが批判を呼んでいる。トランプ氏は31日の会合で「彼は家族を大切に思っている。家庭がなければ駄目だとは考えていない」と擁護したが、両氏の物議を醸す発言に対して民主党側は攻撃を強めている。 

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