【ニューヨーク=佐藤璃子】30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比228ドル(0.6%)高の4万1563ドルで終えた。8月の値幅(高値と安値の差)は1年10カ月ぶりの大きさとなった。景気の先行き懸念から月初に急落した後、過度な景気不安の後退や米利下げ期待の高まりで後半に持ち直す不安定な展開になった。
ダウ平均は30日、連日で最高値を更新した。朝方発表の7月米個人消費支出(PCE)物価指数は前月比0.2%上昇で、市場予想通りだった。米連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げを始めるとの見方を支えた。他の主要株価指数も上昇し、S&P500種株価指数が前日比1%高、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は1.1%高で引けた。
ダウ平均は8月月間では720ドル(1.8%)高になり、4カ月連続で上昇した。8月に付けた終値ベースの安値は5日の3万8703ドルで、高値は30日だった。値幅は2859ドルとなり、2022年10月(3658ドル)以来の大きさを記録した。
8月初旬は7月の米雇用統計で失業率が想定以上に高まったことなどをきっかけに景気後退への警戒感が強まり、米株相場は急落した。低金利の円を借りてリスク資産に投資する円キャリー取引の巻き戻しも重なり、ダウは5日までの3営業日で2100ドルほど下落した。
その後、7月の米小売売上高や米消費者物価指数(CPI)といった経済指標が景気の底堅さやインフレの鈍化傾向を示し、投資家の不安心理が和らいだ。23日の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でFRBのパウエル議長が「政策を調整すべき時が来た」と9月の利下げを事実上予告し、株高を後押しした。
ダウ平均構成銘柄の8月の騰落率をみると、米小売り最大手ウォルマートが予想を上回る好決算を発表し12.5%高になった。ナイキの11.3%高やコカ・コーラの8.6%高など、消費関連の株価上昇が目立った。
一方、半導体のインテルは28.3%安と急落した。月初に発表した決算で2四半期連続の赤字を計上し、従業員の15%にあたる1万5000人の人員削減と配当の停止を発表。経営再建策が報じられた30日に限れば前日比9.5%高と急伸したものの、落ち込みを補いきれなかった。
28日には、市場の注目が集まった米半導体大手エヌビディアの決算が発表された。売上高と純利益はともに市場予想を上回ったが、これまでの株高で過熱感が出ていたこともあり、決算後は売りが優勢となった。30日には反発し、月間では2%上昇した。
9月2日はレーバーデーの祝日で休場となり、米市場は3連休に入る。連休明け後は米サプライマネジメント協会(ISM)の景況感指数や8月の雇用統計といった景気・雇用動向を占う重要指標の発表を控える。
米銀ウェルズ・ファーゴは30日付のリポートで「市場はFRBの利下げ規模の手がかりを探している。特に雇用統計の結果は金融政策を左右するだろう」と指摘した。
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