【バンコク=藤川大樹】先月東南アジアを襲った台風11号やモンスーンによる豪雨の影響で、ミャンマー各地で洪水や土砂崩れが発生し、300人以上が死亡するなど甚大な被害が出ている。一部地域では稲刈りシーズンを前に多くの水田が冠水。各地で続く国軍と抵抗勢力との戦闘も重なって輸送ルートが遮断され、コメや食用油など生活必需品の入手が困難な地域もあり、深刻な状況だ。

◆避難民キャンプも浸水、水田が冠水

 「川沿いの避難民キャンプで暮らす住民たちは、豪雨でさらなる避難を余儀なくされている。水田が水に浸り、コメの収穫にも影響が出ている」

9月下旬、ミャンマー東部カヤ州で、冠水した水田で稲を刈る住民ら(住民提供の動画から抜粋)

 東部カヤ州で避難民支援を続けるボランティアグループの女性(37)は東京新聞の取材に、現地の状況をそう説明した。豪雨の影響で州内を流れるバルーチャウン川沿いの避難民キャンプなどが浸水。多くの水田が冠水し、今後のコメ不足が懸念されている。  カヤ州では、国軍と民主派の武装組織「カレンニー国民防衛隊(KNDF)」との戦闘が続く。戦闘で物流が滞っており、コメの価格は昨年同時期と比べて3倍近くに値上がりしているという。

◆国軍の支援は首都近郊のみ

 女性は「一人でも多くの命を救うため活動しているが、食料や安全な飲み水が足りない。おなかを壊す人もいるため、医薬品も不可欠だ」と訴える。  現地からの情報によると、ミャンマーでは全国に330ある郡区のうち、70郡区の村や町が洪水や土砂崩れの被害を受けた。およそ100万人の住民が被災し、死者だけでなく行方不明者も少なくない。田畑を耕すために必要な牛や家畜も犠牲となり、数千ヘクタール規模の水田や精米所、貯蔵施設も損害を被った。  クーデターで実権を握ったミャンマー国軍は被災者に対する人道支援を行っているものの、首都ネピドー近郊に限られているのが現状だ。カヤ州や西部ラカイン州など抵抗勢力が優勢な被災地への支援は届いていないという。 

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