【ワシントン=浅井俊典】パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まって1年となる7日、米大統領選の民主党候補ハリス副大統領(59)と共和党候補トランプ前大統領(78)がそれぞれ演説し、犠牲者を追悼した。トランプ氏は中東の混乱を民主政権の「外交の失敗」として攻撃しており、さらなる情勢悪化や対応ミスは選挙戦を左右する可能性がある。

7日、米ワシントンでの集会で米国とイスラエル国旗を組み合わせた旗を掲げる参加者=浅井俊典撮影

◆「オクトーバーサプライズ」を招きかねない

 緊迫の度を増す中東情勢は、「オクトーバーサプライズ(10月の驚き)」と呼ばれる選挙直前の波乱要因となりかねない。ハリス、トランプ両氏は重点的に実施してきた激戦州での選挙活動をこの日は行わず、追悼行事などへの参加を優先させた。

7日、米ワシントンでイスラエルの犠牲者追悼集会に参加する人たち=浅井俊典撮影

 首都ワシントンにある副大統領公邸で演説したハリス氏は、戦闘の発端となったハマスのイスラエル奇襲攻撃を非難し「イスラエルの自衛に必要なものを確保することをあらためて誓う」と支援継続を表明した。一方で「ガザの罪のないパレスチナ人の苦しみを和らげる努力もしなければならない」と述べ、パレスチナにも配慮を見せた。  トランプ氏は南部フロリダ州で開かれたユダヤ系団体の追悼行事に出席し、イスラエル支持を強調。自身が大統領に返り咲くことで「米国に揺るぎない指導力と強さを取り戻す」と訴え、「11月5日(の投票日)は米国だけでなくイスラエルにとっても歴史上最も重要な日になる」と語った。

◆「どちらもパレスチナを顧みない」失望感

7日、米メリーランド大でガザの犠牲拡大に抗議する集会に参加する学生たち=浅井俊典撮影

 バイデン政権はイスラエルへの軍事支援を続ける一方、強硬姿勢を貫くネタニヤフ首相を制御できず、ガザでの民間人被害は拡大し続けている。ニューヨーク・タイムズ紙は過去1年の中東政策を「米国の影響力の限界を浮き彫りにした」と指摘。バイデン氏の外交政策を基本的に引き継ぐハリス氏は難しい対応を迫られている。  7日は全米各地で、戦闘開始から1年の関連行事が開かれた。ワシントンでは、親イスラエル団体がハマスによる奇襲攻撃の犠牲者を追悼する集会を開催。二十数年前までイスラエルに住んでいた看護師のマリア・アブラモビッチさん(56)は「毎日心が痛む。中東に早く平和が戻ってほしい」と願った。東部メリーランド州メリーランド大でガザの犠牲拡大に抗議する集会に参加した大学生のステファノ・ラフォーさん(20)は「ハリス、トランプ両氏ともイスラエル支持でガザを顧みない。選挙では、よりましな方を選ぶしかない」と話した。 

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