ブリュッセルを訪問中の中谷元・防衛相は17日、ウクライナのウメロウ国防相と会談し、自衛隊が保有する車両の追加支援を新たに行うことを表明した。

 会談後、中谷氏が記者団に明かした。会談では、ロシアによるウクライナ侵攻を「国際秩序を脅かすもの。防衛省・自衛隊は引き続きウクライナとともにある」と述べたという。また、日本周辺で中国やロシア、北朝鮮の軍事活動が活発化していることも伝えた。

 ウメロウ氏との会談後、中谷氏は北大西洋条約機構(NATO)国防相会合に参加した。NATOは日本をインド太平洋地域のパートナー国と位置づけており、日本の防衛相参加は初めて。

 中谷氏はNATO国防相会合で、ロシアの侵攻が続くウクライナに連帯を示すほか、悪化する中東情勢をめぐり全ての当事者に停戦の実現に取り組むよう求めるなど、日本政府の立場を表明したとみられる。

 中谷氏にとっては10月の就任後、初の外遊となる。日NATO関係をめぐっては、日本は2022年4月に林芳正外相(当時)が外相会合に、同年6月には岸田文雄首相(同)が首脳会議に初めて出席した。中谷氏の今回の国防相会合への参加もこの流れをくむ。同会合には日本のほか、同じインド太平洋地域のパートナー国である豪州、ニュージーランド、韓国も招待された。

 日NATO間で進む連携の背景には、安全保障をめぐる戦略上の思惑がある。NATOにとってロシア、日本にとって中国が安全保障上の脅威となっており、日NATOは中ロ両国の連携の動きを強く警戒。日NATOは中ロ両国による「力による一方的な現状変更」に反対し、安全保障協力を強めている。

 NATOは22年に採択した戦略概念で、インド太平洋地域について「欧州・大西洋地域の安全保障に直接に影響しうるため重要」と位置づけ、中国の政策については「我々の利益、安全保障、価値観への挑戦」と初めて言及。防衛省幹部は「ウクライナや中東情勢がある中で、NATOのインド太平洋地域へのより強い関与を引き出すことが、今回の外遊の最大の主眼だ」と語る。

 中谷氏は19日にイタリアのナポリで初めて開催される主要7カ国(G7)国防相会合にも参加する。外遊出発前の16日、防衛省で記者団に対し「インド太平洋の地域情勢に関する議論をリードし、防衛・安全保障の面でG7の結束の確認を図りたい」と語った。(ブリュッセル=里見稔)

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