米製造業景況感は「不況」状態が続く(米ワシントン州の航空機部品工場)=ロイター

【ニューヨーク=長尾里穂】米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した10月の米製造業景況感指数は46.5と前月から0.7ポイント低下し、好不況の分かれ目の50を7カ月連続で割り込んだ。市場予想(47.6)も下回り、1年3カ月ぶりの低水準だった。米大統領選を前に新たな投資を控える企業が多く、生産活動が低下した。

指数は過去2年ほど50を下回る「不況」水準の傾向が続く。指数がおおむね50を上回る米サービス業とは対照的だ。

個別の項目では、新規受注を表す指数が47.1で前月比1.0ポイント上昇した。生産活動の指数は46.2で3.6ポイント下がった。顧客からの需要も低迷している。在庫に関する指数も42.6と1.3ポイント下がった。

調査対象の企業からは「ビジネスレベルは低迷したままだ。経済の先行きが見通せないなか、在庫を抱えたくない顧客からの注文が減っている」(金属加工)。「(5日の大統領選など)選挙の結果が不透明なため、特に電気自動車(EV)の貿易管理などに焦点を当てた複数のリスク分析が必要だ」(輸送機器)との声が上がった。

ISMで調査を担ったティモシー・フィオレ氏は「二大政党の財政政策や金融政策への懸念から企業は資本や在庫への投資に消極的だ。需要も低迷している」と分析した。

雇用環境を表す指数は44.4と0.5ポイント上がった。それでも5カ月連続で50を下回っている。新規採用を控えることなどで雇用を調整している企業があった。

納期を示すサプライヤー指数は52.0と0.2ポイント下がった。この数値は指数が高いほど納期に遅れが生じていることを意味し、数字上は小幅に改善している。ただ10月に発生した大型ハリケーンや港湾ストライキの影響を不安視する向きもある。

企業からは「港湾ストライキの影響を受け、今後のプロジェクトで重要な部品が時間どおりに納品されるか不安が生じている」(石油・石炭)との回答もあった。

9月中旬からは米ボーイングの主力工場でもストライキが続く。調査会社パンテオン・マクロエコノミクスのシニア米国エコノミスト、オリバー・アレン氏は「ストライキの影響は明らかに数社に集中している。米製造業景況感指数の悪化は、ストライキとはあまり関係がない」と指摘した。

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