南正文さんの代表作「活きる(桜)」を眺める妻の弥生さん=奈良県天理市

事故で両腕を失い、口と足で筆を持って花鳥風月を描いた日本画家、南正文さんの13回忌に合わせた作品展が、奈良県天理市柳本町のティーハウス「クリノキ」で開催されている。代表作が天理市杣之内町の幾坂池の桜を題材にしていたことから、同市での開催が決まった。主催する「一般社団法人・南正文よろこびの種を」の代表理事で妻の弥生さん(70)は、「作品から南の情熱を感じてもらいたい」と話している。

堺市出身の南さんは、小学3年のときに、父が営む木工所で機械のベルトに巻き込まれ、両腕を切断。中学2年で口で絵を描く大石順教尼(明治21年~昭和43年)の最後の弟子となり、平成24年に61歳で亡くなるまで約900点もの作品を制作した。

展覧会では南さんの代表作である幾坂池の土手に立つ一本桜を描いた「活きる(桜)」のほか、ひまわりや菊、コスモスなどを描いた絵画約15点を全国の持ち主から借りて展示。岩絵具で描かれた優しいタッチの作品は、生きることの喜びや温もりを感じさせる。

筆を口にくわえて作品に向き合う南正文さん(弥生さん提供)

生前は弥生さんとよく大阪から奈良へ遊びに来ていたという南さん。幾坂池の一本桜は、依頼を受けた桜のスケッチをするため、奈良で車を走らせているときに見つけた。描き上げた「活きる(桜)」は手放したくないほど気に入ったが、この作品にほれこんだ依頼主からの熱望を受け、泣く泣く手放したという。

弥生さんは「真剣な顔で絵を描く姿が、とてもかっこよかった」と振り返り、「心に闇を抱えがちな今の時代だからこそ、ハンディがあっても負けずに作品作りに取り組んだ南の生きざまを感じてもらいたい」と話す。

展示は21日までの金、土、日、月曜(各日とも午前11時~午後4時半、入場は午後4時まで)。会期中は午後2時から、南さんの制作活動や日常を切り取ったドキュメンタリー映画「天から見れば」(入江富美子監督、平成23年)が上映される。

作品展は入場無料だが、映画鑑賞は千円が必要。問い合わせは弥生さん(090・1141・0373)。

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