日本再生医療学会は30日、細胞が分泌する微粒子「エクソソーム」を病気の治療に安全に使うための指針を公表した。製造して患者に投与するまでのリスク要素を挙げ、細胞治療などの「再生医療」に準じた安全管理をすべきだとした。

エクソソームは大きさ約100ナノ(ナノは10億分の1)メートルの微粒子でたんぱく質やRNA(リボ核酸)を内部に含む。細胞を培養して製造でき、体に投与すると炎症を抑えたり、免疫を制御したりして治療効果を得られると期待されている。

世界ではエクソソームを呼吸不全などの治療に用いる臨床試験(治験)が進むが、治療効果を実証して実用化した例はまだない。国内では抗加齢効果や美容効果をうたって医療保険の適用されない自由診療でエクソソームを提供するクリニックが増えているが、安全性の明確な基準がない。

微粒子「エクソソーム」に関する指針について説明する新潟大学の寺井崇二教授(30日)

学会はエクソソームの製造や保管、投与方法が不適切な場合、感染症の原因となったり体に毒性を示したりする恐れがあると指摘した。こうしたリスクは細胞などを投与する再生医療と似ているため、再生医療の安全性や品質の基準に準じた管理をすべきだとした。

健康被害が起きた際に原因を調べられるよう、投与したエクソソームの保管も推奨した。今後エクソソームについて新しい知見が得られれば指針を順次改訂していくとした。指針のとりまとめを主導した新潟大学の寺井崇二教授は30日の記者会見で「エクソソームの治療技術は急速に進歩しており、指針によって健全な発展を促したい」と話した。

自由診療での安易な利用によって健康被害が起きればエクソソーム自体への信用が失われかねないと懸念されている。海外では米食品医薬品局(FDA)が2019年に、不適切に製造されたエクソソームによって重い健康被害が起きたとして注意を促した事例がある。

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