68年ぶりに教員出身で神戸市教育長に就任した福本靖さん=同市中央区で2024年4月30日午前11時56分、栗田亨撮影

 神戸市の市立中学校管理職時代に取り組んだPTAや学校改革で名をはせた福本靖さん(62)。定年退職した2年前に川西市教育委員会にスカウトされ、働き方改革や部活動の地域移行を担当した。古巣から呼び戻され、68年ぶりとなる教員出身の教育長となった。

 「これからは保護者が学校運営に入らないと回っていかない」が持論だ。だが、教員が日常業務に追われる中、保護者も行事中心で負担の大きい従来型のPTAには忌避感がある。

中学校長で学校改革

 市立中の校長だった2014年、PTA役員と協力して広報誌の発行をやめるなど活動を整理し、保護者と学校の課題について意見交換する月1回の運営委員会を主軸に据えた。「何でも文句を言ってください」。そう呼び掛け、要望やアイデアを大胆に取り入れていった。

 2校の中学校長を務めて退職するまでの間、教員の負担減のためテストの採点支援システムの導入や通知表の所見欄を廃止。生徒が落ち着いて参加できるよう、卒業式を公立高校入試の翌日に変更し、不登校の子どもらが利用できる校内サポートルームを設置した。

 先進的な取り組みは市内や他の自治体にも取り入れられた。「私の改革は『もう変えた方がいい』と皆さんが思っているものを実際に変えることだ」と説明する。

保護者との意思疎通が大切

 神戸市では近年、第三者委員会などの調査でいじめ自殺と認定された事件が相次ぐなど、学校現場を見る目は厳しい。「保護者と『一見(いちげん)さん』のつながりしかなければ小さなことでも大ごとになる。深刻な訴えを学校側が拾えないことにもなる」と意思疎通の大切さを強調する。保護者との距離を詰め、小さな芽の段階から防ごうと試みる。

 3月に就任し、4月にはPTA改革のパートナーだった保護者との2冊目の共著「令和版 学校のトリセツ」(かもがわ出版)を出した。「校長だからできることがいっぱいある。そのためのアドバイスや支援はいくらでもします」と現場にエールを送った。【栗田亨】

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