(9日、第106回全国高校野球選手権佐賀大会2回戦 武雄1―2佐賀工)

 1―2でもつれこんだ八回裏。2死から二塁打を浴びて4番打者を迎え、武雄の守備陣には緊張感が漂っていた。追加点は絶対与えられない。ベンチから旗島晴選手(3年)が伝令で飛び出してきた。

 「チョウザメが最近、日本でも増えてきているらしい。キャビアを楽しみにして食べよう」

 伝令の内容にマウンドの選手たちの緊張が少しほどけた。坂口悠真捕手(同)は、「リラックスのための雑談。走者は気にせず、打者に集中しようということ」。そして、みんなで天を見上げた。

 「同様の場面でよく点を取られていた」(内田努監督)という状況で、選手たちが考えた気持ちの切り替え方法だった。

 坂口捕手もまた、3年になる直前、捕手の役割のプレッシャーに押しつぶされた。野球から「逃げ出した」が、仲間やマネジャーに代わる代わる説得され、戻ってきた。

 八回裏のピンチは内野ゴロで切り抜けた。ただ九回、一打が出ず試合は終わった。

 坂口捕手はこの日、中学からの野球部仲間、犬走匠吾投手(同)と中川内晄投手(同)の継投をリードした。「2人とも、これまでにないほどのいいピッチングでした。捕手としては、投手が気持ちよく投げられるように、しっかりと受け止めようと意識しました。負けたいまは悲しいけど、最後まで仲間と野球を続けることができ、思い出に残ると思う」。しっかりとした口調で話した。(野上隆生)

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