(10日、第106回全国高校野球選手権山梨大会1回戦 甲府商4―2身延)

 1点を追う八回表、身延の米山綾亮主将(3年)は、内角甘めの直球を逃さず左中間に運んで二塁打にした。三塁走者が生還し、土壇場で同点に追い付いた。

 「狙った球ではなかったが、体が反応した」

 塁上で、満面の笑みを浮かべ、少しおどけたように両手を挙げたり、拳を突き上げたりして喜びを爆発させた。

 「最後の打席になるかもしれない。思い切り楽しもう」。打席での気負いはなかったという。

 モットーは「とにかく楽しむこと」。そして「自分より練習している選手は、相手にはいない」。そんな自信もあった。

 二回表の先制点も、米山主将の中前打が端緒になった。この日は4打数3安打の活躍でチームを引っ張った。

 プレーだけではない。五回に逆転された時、ベンチは沈んだ。「暗い顔をしてやっても何もない。楽しめ。楽しめ」。チームメートに声をかけ続けた。

 中山賢人監督は「ムードメーカーでリーダーシップもある。彼を慕う人は多い」と信頼を寄せる。

 八回裏に勝ち越されて敗れたが、米山主将は「やれることはやった」と胸を張る。

 富山県魚津市出身。中山監督を慕って身延にやってきた。「友だちが1人もいなかった僕と、みんな仲間になってくれた。主将としてふがいないこともあったと思う。感謝しかない」

 将来の夢を尋ねられると、「お笑い芸人になることです。みんなが笑ってくれる、元気になってくれることが好きだから」。笑顔でそう答えた。(豊平森)

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