(11日、第106回全国高校野球選手権東東京大会2回戦 雪谷4―5二松学舎大付)

 延長十一回1死二、三塁、二松学舎大付の及川翔伍(2年)は、直球を待っていた。狙い通り来た球を振り抜くと、「よっしゃー」と大きくガッツポーズをした。甲子園出場校同士の2時間20分の熱闘に、終止符が打たれた。

 力尽きた雪谷。試合後、グラウンドで泣き崩れる選手がいる中、これまでチームを率いてきた、主将で三塁手の財津佑頼(3年)は平静を保っていた。「都立でも強豪相手にこんな試合ができて、今まで練習したことを証明できた」

 中学時代、クラブチームで軟式野球の全国大会に出場した。甲子園を目指すチームとして選んだのが都立の雪谷だった。

 高いレベルの野球を求めた。新チームが始動した昨夏、主将になると、バントだけを練習する時間を設けた。少ないと感じていた走塁の練習メニューも考え、「次の塁を狙う意識」を浸透させようとした。

 最後の夏の大会。初戦の相手は、二松学舎大付。私学の強豪に挑むのが、都立の役目と意気込んだ。

 11日の試合、雪谷は一時3点リードするなど、財津の思い描いた展開になった。財津は八回にベンチに下がった後も、チームを鼓舞し続けた。

 1点も与えられない九回裏には、伝令としてマウンドに走った。「全校が応援しに来てくれている。攻撃につなげるためにも、まず地に足をつけて守っていこう」。スタンドから大歓声が響く中、そう伝えると、チームメートの表情に笑顔が戻った。

 だが、一歩及ばなかった。試合後の取材、財津は「やっぱり悔しい」。目に、うっすらと涙をにじませていた。=神宮(佐野楓)

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