(20日、第106回全国高校野球選手権東東京大会5回戦 帝京10―0実践学園=6回コールド)
次々と外野に飛んでいく打球を見て、実践学園の捕手・長谷川巧磨(3年)は思わず苦笑いした。「失投を一発で仕留めてくる。さすが帝京だな」。目の前にいる打者はみんな大きくて、スイングも鋭い。格上とわかっていたけれど、レベルの差を見せつけられた気がした。
六回裏の攻撃、10点差をつけられ、コールド負けは目前。ライナー性の打球を打てるのが自分の持ち味だが、高校最後の打席は空振り三振に終わった。今大会3試合連続で2桁得点の強力打線も、この日は無安打。「相手に飲まれたまんま。1本も打てなくて、内容は悔いが残る試合だった」。約90分で終わった試合を、淡々と振り返った。
試合後の整列で、帝京の主将から声をかけられた。「絶対甲子園行くんで、応援よろしくね」
相手から先に言葉をかけられたのは初めて。「応援してます」と一言、伝えた。「泣くつもりはなかったけど、あの言葉で、一気に終わったんだなって」。ベンチに戻り、三塁側スタンドを見つめる。こらえていた涙を、そっとヘルメットで隠した。=神宮(野田枝里子)
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