(10日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 日本航空4―8掛川西)
「ナイスバッティング」。三回裏、日本航空の4番・小林幹汰(3年)が中越え二塁打を放つと、掛川西の主将で遊撃手の山下陸人(3年)から声がかかった。
「ありがとう」。小林が返すと山下は軽く手を挙げて守備に戻った。
小林は浜松市出身。掛川西には中学時代に同じチームだった選手5人がベンチ入りしていた。その一人、山下とは小学生時代にバッテリーを組んだ親友で、小林は捕手として山下の投球を受けた。
小林は中学3年の夏、甲子園に出た日本航空にあこがれ「自分も甲子園に行きたい」と故郷を離れた。そして高校最後の夏。日本航空はその夏以来3年ぶりに、掛川西は26年ぶりに夏の甲子園出場を決めた。
「おめでとう」。2人はほかの仲間とともに、LINEで祝福し合った。
「甲子園で対戦できたらいいね」
それが現実になった。
組み合わせ抽選会の日、山下は「甲子園にお互いに出場できたのは運命だと思うし、初戦も神様が与えてくれた」と語った。小林も「自分が成長した姿を見せたい」と試合を楽しみにしていた。
プレーで声をかけあうチャンスは七回表にもあった。山下が右前打で出塁した後、二塁へ。だが、二塁手の小林は1点を勝ち越された直後。「チームに声をかけるので必死。ピンチでそれどころじゃなかった」
九回裏、小林は三塁ゴロで最後の打者となり試合終了。整列してあいさつを終えると、山下と固く抱き合い、声をかけた。「頑張れ。次も勝てよ」。山下はすごくいい顔を返してくれた。
「全員、すごく成長していた。頼もしい仲間だなと思った。甲子園にかける思いが前面にでていた」と小林。試合後、しばらくタオルで顔を覆っていたが、吹っ切れたように笑顔になると、「最後まで全力でプレーする掛川西は戦いにくかった。次もきょうみたいに、全力でプレーしてほしい」。そうエールを送った。
=敬称略(豊平森)
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