ソニーと日立、次世代量子コンピューター共同開発で基本合意

ソニーと日立、次世代量子コンピューター共同開発で基本合意

ソニーグループと日立製作所は、次世代量子コンピューターの共同開発に関する基本合意書を締結したと発表した。両社は、2027年までに1000量子ビットクラスの汎用量子コンピューターの実用化を目指す。日本企業による大規模な量子コンピューター共同開発は初めてで、政府の「量子フロンティア」戦略の中核プロジェクトとなる見込みだ。

量子コンピューター

共同開発の内容と目標

ソニーは、半導体製造で培った精密加工技術と極低温制御技術を提供し、日立は、大型システム開発のノウハウと量子アルゴリズム研究の成果を活かす。両社は、超伝導量子ビット方式を採用し、誤り訂正技術の実装にも取り組む。目標とする1000量子ビットは、現在世界で最も高性能とされるIBMの「Condor」(1121量子ビット)と同等の規模となる。

「量子コンピューターは、材料開発、医薬品設計、金融モデリングなど、従来のコンピューターでは解けなかった問題を解く鍵だ」と、ソニーの吉田憲一郎会長兼CEOは述べた。日立の小島啓二社長も「日本の技術力を結集し、量子時代のインフラを構築したい」と意気込みを語った。総投資額は500億円を超える見込みで、経済産業省からも補助金が出される予定だ。

技術開発

日本の量子技術の現状

日本は、量子コンピューター開発において米国や中国に後れを取っているとされる。米国のIBMとGoogle、中国の本源量子(Origin Quantum)などがすでに数百量子ビットクラスのマシンを開発しており、商業化も進んでいる。日本では、理化学研究所が2023年に国産初の量子コンピューターを公開したが、64量子ビットに留まり、汎用性にも課題があった。

政府は2020年に「量子技術革新戦略」を策定し、10年間で1000億円規模の投資を計画している。しかし、民間企業の連携が不足しており、実用化に向けた動きは遅れ気味だった。今回のソニー・日立の提携は、政府の戦略を具体化する重要な一歩と評価されている。

半導体

実用化への道筋と課題

量子コンピューターの実用化には、量子ビット数の拡大に加え、誤り率の低減が不可欠だ。現在の技術では、量子ビットの誤り率は0.1~1%程度とされ、実用的な計算を行うには1000量子ビット中の誤りを自動的に訂正する「量子誤り訂正」技術が必要となる。ソニー・日立の共同チームは、2026年末までに100量子ビットのプロトタイプを完成させ、誤り訂正アルゴリズムを実証する計画だ。

用途としては、自動車業界の新素材開発、製薬会社の創薬シミュレーション、金融機関のリスク管理モデルなどが想定されている。トヨタ自動車と武田薬品工業は、すでに共同開発チームへの参画を表明している。2030年までに、日本国内に量子コンピューターを活用した産業クラスターを形成し、世界市場で20%のシェアを目指すという野心的な計画が動き出した。

出典:ソニー / 日立 / 経済産業省
画像:Unsplash

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *