日本銀行(日銀)の植田和男総裁は、12日の記者会見で「物価上昇率が持続的に2%の目標に向かって推移する場合、追加的な金融政策の正常化を検討する必要がある」と述べ、市場に追加利上げの可能性を強く示唆した。現在の政策金利は0.25%だが、年内に0.5%への引き上げが現実味を帯びてきた。
物価動向と利上げのタイミング
日銀が注目するコアコア消費者物価指数(生鮮食品とエネルギーを除く)は、6月に前年比2.1%上昇し、17か月連続で2%を超えた。特にサービス価格の上昇が目立ち、宿泊料金は前年比15.3%上昇、外食代も4.8%の値上がりを記録した。植田総裁は「賃上げの波及による物価上昇の持続性が確認できつつある」と分析した。
市場では、10月の金融政策決定会合での利上げが有力視されている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの首席エコノミスト、小林真一郎氏は「賃上げの春闘結果が今夏の物価動向に反映されれば、10月利上げは既定路線となるだろう」と予測。ただし、米国の景気減速懸念や円安メリットを享受する輸出企業への影響も考慮される必要がある。
円安介入との関連
日銀の利上げ示唆は、急速に進行する円安への対応という側面も持つ。7月に入り、円ドル相場は一時162円台まで下落し、37年ぶりの円安水準を記録した。財務省・金融庁・日銀の三部署協議が開催され、神田真人財務官は「過度な変動には適切に対応する」と警告したが、具体的な為替介入は行われていない。
日銀の利上げは円高圧力となるが、現時点では0.25%の小幅な利上げでは円安を覆すほどの影響力はないとの見方が主流だ。ゴールドマン・サックスは「日米金利差は依然として大きく、円安トレンドの転換には日銀の連続利上げとFRBの利下げが両立する必要がある」と分析している。
市場の反応と企業影響
植田総裁の発言を受け、東京株式市場は一時的に円高・株安となったが、午後には輸出銘柄の買い戻しで日経平均は反発した。一方、国債市場では10年物金利が一時0.95%まで上昇し、11年ぶりの高水準を付けた。
企業の反応は分かれている。トヨタ自動車やソニーグループなど輸出主力企業は円安メリットの縮小を警戒する一方、輸入依存度の高い食品やエネルギー関連企業は円高を歓迎している。帝国データバンクの調査では、企業の63%が「円安が業績に悪影響を与えている」と回答しており、円安一辺倒の風潮に変化の兆しが見られる。
出典:日本銀行 / 日経新聞
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