沖縄本島北部の「やんばる」(国頭村・大宜味村・東村)が、ユネスコ世界自然遺産に登録されてから7月で1周年を迎えた。記念すべき年を迎えたやんばるでは、持続可能なエコツーリズムが活況を呈し、自然保護と地域経済の両立を目指す新たな観光モデルとして注目を集めている。
世界自然遺産の価値
やんばるが世界自然遺産に認定されたのは、亜熱帯の常緑広葉樹林に覆われた山々と、そこに生息する多様な生物相の豊かさによる。特に、絶滅危惧種のノグチゲラ、ヤンバルクイナ、オキナワ woodpecker(アカゲラ)など、固有種の鳥類が豊富に生息している点が高く評価された。森林面積の約80%が国有林であり、開発から守られてきたことが、貴重な生態系の保存につながっている。
世界遺産登録後、やんばるを訪れる観光客は前年比45%増加し、年間延べ80万人を超えた。国頭村の観光協会によると、エコツアーの予約は半年前から埋まることが珍しくなく、人気ガイドのツアーは1年先まで予約が入るほどだ。ガイドの中には、地元出身で20年以上やんばるの自然を研究している専門家も多く、観光客に深い学びと感動を提供している。
エコツーリズムの実践
やんばるのエコツーリズムは、「観光客が自然を楽しむだけでなく、自然保護に貢献する」という理念に基づいている。例えば、「やんばる森のガイドツアー」では、参加費の一部が森の保全活動に充てられ、ツアー中には外来植物の除去作業にも参加できる。2026年上半期だけで、観光客による保全活動で約5ヘクタールの外来植物が除去された。
人気の「ナイトツアー」では、暗闇の森の中でノグチゲラの眠る姿や、ヤシガニの営巣を観察できる。ガイドの headlamp の光が浮かび上がる昆虫や両生類の姿に、参加者は息を呑む。「子供たちに、iPadでは絶対に体験できない感動を与えたかった」と、東京から家族旅行で訪れた佐藤健一さん(42歳)は語る。
持続可能な観光への挑戦
観光客の急増に伴い、やんばるでも観光公害の懸念が浮上している。特に人気の「ビーチエントランス」では、駐車場が不足し、路上駐車が増加。環境省や沖縄県は、シャトルバスの運行や予約制駐車場の設置を進めている。2026年10月からは、主要スポットへの入場に事前予約制を導入する予定だ。
地元住民の生活への配慮も重要な課題。国頭村の比嘉富美子村長は「観光は歓迎するが、村民の生活を脅かすようなことは許さない」と述べ、観光客向けのマナー啓発を強化している。宿泊施設も、大規模リゾートホテルではなく、地元の民家を活用した民泊や、自然と調和した小規模ロッジが主流となっている。やんばるの挑戦は、日本の観光地が世界遺産登録後に直面する「成功のジレンマ」のモデルケースとなりうる。
出典:沖縄県 / 環境省
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