岩谷産業とコスモエネルギーホールディングス(HD)は8日、共同運営する初の水素ステーションを東京都内に開業した。コスモの既存の給油所に併設し、トラックなど商用の燃料電池車(FCV)の利用を見込む。岩谷は2023年末に村上世彰氏が関わる投資会社から約20%のコスモHD株を取得した。資本面でも関係を強めた両社の協業の第一歩となる。
東京港や羽田空港に近く、物流倉庫が集まる東京都大田区の平和島地区に水素ステーションを開いた。コスモHDの給油所の隣接地で、水素の貯蔵能力は3000キログラム。大型トラック100台に充塡できる。1台の充塡にかかる時間は10分程度だという。
岩谷の間島寛社長は同日の開所式で「燃料電池トラックなどの商用車に対応するため、水素ステーションの大規模化が求められている」と述べた。コスモHDの山田茂社長も「当社はトラックやバスが集まる地点に大型の給油所を持っており、水素ステーションを併設しやすい」と説明し、岩谷との関係強化に前向きな姿勢を示した。
岩谷は産業用の水素販売で国内トップ。14年からはFCV向けの水素ステーションを展開している。現在運営する水素ステーションは50カ所を超え、国内シェアでは3割程度を占める。
水素ステーションは主に都心にあり、一般乗用車の利用を見込んでいた。ただ環境対応車では電気自動車(EV)が先行して普及しており、FCVは遅れぎみだ。一方、1回の充塡による走行距離の長さといった特長を生かして、トラックやバスなどでFCVの車種が増えるとみられる。
コスモHDについては、村上世彰氏が関わる投資会社が22年以降に約2割の株式を保有する筆頭株主となり、経営陣と再生可能エネルギーの事業方針などを巡って対立していた。かねてコスモHD側と水素ステーション運営に向けた協議を進めていた岩谷が、23年末に1000億円強を投じて村上氏側からコスモHD株ほぼすべてを買い取り、対立を収束させた経緯がある。
岩谷の間島社長は「4月中をメドに(水素ステーション以外の)具体的な連携のあり方も示したい」と話した。みずほ証券の新家法昌シニアアナリストは「岩谷とコスモHDは協業による成長シナリオを示さなければならない。特に岩谷は巨額投資を踏まえ、両社のシナジーによる収益増が見込めるか株主に説明する責任がある」としている。
(中村信平、河野真央)
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