(20日、第106回全国高校野球選手権福岡大会準々決勝 東海大福岡3―7西日本短大付)
前日の雨で中断し、5点のリードを許す五回裏の守りから再開した継続試合。「もう1点も渡さない」。東海大福岡のエース佐藤翔斗投手(3年)は気迫の投球でこの回を三者凡退に仕留めた。
187センチの長身を生かし、速球で押す投球を追求してきたが、試合終盤になると、球が甘くなる。目標とする「1人で投げきる投手」になるには、どうしたらいいか。悩んでいた昨夏、尊敬する投手コーチに教えられた。「お前は140キロが投げられる変化球ピッチャーだ」。緩急をつけて打たせてとり、球数を少なくするスタイルを目指し始めた。
変化球を磨くため、ずっと白球を握った。ボールが手から離れる時の感覚をイメージするためだ。毎晩のベッドでも続け、そのまま眠りに落ちることも。カーブが決め球に加わって安定感が増し、チームを今春の選抜大会に導いた。
今大会も順調に勝ち上がったが、この試合は初回に3失点。「悪い流れを断ち切りたい」と渾身(こんしん)の力で投げ、自己最速の146キロを記録したが、打ち返された。だが一夜明けた再開後は、カーブやカットボールで緩急をつけた投球を取り戻し、マウンドで躍動した。
前日の点差を埋められずに敗れたが、「持っているものを全て出せた。1点を全力で奪いにいく時間が、楽しかったです」。目を潤ませながら、さわやかに笑った。(太田悠斗)
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