(25日、第106回全国高校野球選手権静岡大会 浜松工1―5加藤学園)

 優勝候補の加藤学園を相手に1点を先制して迎えた二回表。加藤学園の4番打者、片山晴貴捕手(3年)が打席に入った。浜松工の井口梨玖(りく)捕手(3年)は、同じ捕手の片山捕手の堂々とした姿に威圧されそうになったが、「抑えられる」と自らを奮い立たせた。

 「思い切って投げてこい。コースをどんどん攻めていこう」。試合前、先発登板のエース村松幸河投手(3年)とそう話していた。しかし、甘く入った直球を左翼に運ばれ、逆転の口火を切られた。1死後に屋海州選手(3年)のスクイズ処理にもたつくなど、この回計3点を奪われた。

 中学時代は捕手だったが、昨秋は二塁手に回り、昨冬から捕手に戻った。練習試合では満足のいくリードができず、もがいたが、今大会は勝ち進むにつれて、盗塁を阻止できたりワンバウンドの捕球がうまくできたりすると、捕手の面白さを感じた。焦りがにじみ、表情が硬かった村松投手に「とにかく笑顔で。いい顔をして投げて」と伝え続けた。次第に顔つきが変わり、ミットを構えたところにボールが来るようになった。浜松工は足を絡めてしぶとく攻めてくる加藤学園に及ばなかったが、仲間たちと「楽しく試合ができた」。心からそう思う。(田中美保)

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