日本の寿司職人が海外レストランに移る動きが増えている。人手不足と低賃金が背景で、若手職人はより高い報酬を求めて海外で働くケースが相次いでいる。業界は技術継承と待遇改善の両立に直面している。海外への流出は、日本の食文化を世界に広める一面もあるが、国内の技術継承が滞るリスクも指摘されている。特に地方都市では、後継者不足が深刻化している。
東京や大阪の老舗寿司店では、修行期間が長く、賃金が伸び悩む傾向がある。一方、欧米やアジアの高級寿司店では、経験を積んだ職人に高い給与と福利厚生を提供している。若手職人にとって、海外は技術を活かしながら生活基盤を安定させる魅力的な選択肢となっている。特にシンガポールやドバイ、ロサンゼルスでは日本人寿司職人が高く評価されている。
寿司業界の団体は、若手の確保のために賃金向上と働き方改革を進めている。一部の店舗では、週休二日制や研修制度の見直しを始めた。職人の魅力を伝える広報活動も強化している。しかし、長年続く厳しい上下関係や長時間労働の慣行を変えるには時間がかかる。多くの若者は、寿司職人としての将来に不安を感じている。
海外移住の職人からは、日本以上に創作寿司の自由が認められるという声もある。素材の選択や演出に幅を持たせてもらえる環境が、海外への大きな魅力となっている。日本では伝統的な江戸前寿司の形式が重んじられる一方、海外では地元の食材を取り入れたフュージョン寿司も人気がある。こうした創作の自由が、若手職人の海外志向を加速させている。
専門家は、職人の海外流出は日本の食文化を世界に広める面もあると指摘する。しかし、国内の技術継承が滞れば、日本の寿司の質やブランド力が低下するリスクもある。特に高級寿司店では、長年かけて培われた職人の技術と眼差しが重要であり、これを短期間で育成することは困難だ。継承の危機が日本の食文化全体に影響を与える可能性もある。
今後、業界は海外市場との連携を強化しつつ、国内の後継者育成に本腰を入れる必要がある。寿司文化の持続可能性を担保するため、産学官の連携が求められている。教育機関や自治体との連携により、若者が寿司職人としての道を魅力的に感じられる環境を整備することが重要だ。日本の寿司文化を守り、世界に発信する両立が今後の課題となっている。
コンパイル元:日経新聞
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